八ツ場ダムについての私見2009/09/23 14:00

 23日に前原国土交通相は、中止を明言した八ツ場ダムの建設予定地を視察しました。八ツ場ダム関連の工事の恩恵を受けている仕事に就いている立場から私見を書きたいと思います。まず八ツ場ダムの簡単な説明から(八ッ場あしたの会のHPより)

(概要)
1947年(昭和22年)カスリーン台風により利根川流域など大洪水。
1949年(昭和24年)計画発表。
1953年(昭和28年)ダム建設反対の住民大会が開かれる。

吾妻川が強酸性の河川であることから、ダム計画、表面的には一時中断。

・1963年(昭38年)草津町に中和工場完成
・1965年(昭40年)群馬県、住民にダム建設を発表
          八ッ場ダム連合対策委員会発足
・1966年(昭41年)長野原町議会、ダム反対を全会一致で決議
・1974年(昭49年)川原湯地区の反対期成同盟委員が町長に当選し反対運動は盛り上がるが、この後、町政は県・国による締めつけに苦しむことになる。
・2001年(平13年)八ッ場ダムの完成を2010年度に延長する基本計画変更を告示。(2000年→2010年)
・2003年(平15年)国土交通省、八ッ場ダム事業費変更案(2110億円→4600億円)を発表。
・2007年(平19年)国土交通省、事業工期を2015年度末に延長を公表。

(目的)
・治水(洪水調節のため)
・利水(首都圏の生活・工業用水のため)
    八ッ場ダムの水は、埼玉県、東京都、千葉県、群馬県、茨城県、栃木県の一都五県に水道用水、工業用水として供給される予定である。

(問題点)
・ダム予定地の両岸は浅間山の噴火の影響でもろい地質であり、地すべり多発地帯で貯水をすればダム湖の周辺では地滑りが起きる可能性がある。
・住民代替地も崖の直下の危険指定地、長野原第一小学校のすぐ上には防災ダムが存在する。(アリ地獄の中?)
・首都圏はここ10年工業水も水道水も水あまり状態、しかしダムが完成すると強制的にダムの中和された水を多くの地域の人が飲まされる事になる。
・完成しても治水に意味が無い。(2008年6月6日の政府答弁書は、カスリーン台風再来時の八斗島地点(群馬県)の洪水ピーク流量が、八ッ場ダムがある場合もない場合も同じであり、八ッ場ダムによる削減効果がないことを認めるものでした。)
・中和生成物の沈殿池である品木ダムはすでに 8割が埋まっており近い将来には満杯になり、中和生成物が流出する。この中和生成物は八ッ場ダム完成後には八ッ場ダム湖に沈殿するようになる。八ッ場ダムが満杯になればさらにダム建設をしなければならない。
・自然環境の破壊
・移転ありきの住民生活

(私見)
・ダム建設の目的である利水については、データから意味が無い事がはっきりしている。治水についても意味が無い事を国は間接的に認めている。またダム建設予定地についても国会で「ダムの基礎地盤としてきわめて不安定」と指摘されている。ではなぜ作るのか、60年間前に計画し予算を立て、予算実行してきたからだろう。いまさらやめる明確な説明がつかないからに他ならない。今中止すれば今までの金はどうするんだと言われてしまう、そこがお役所であり、コストを求める民間とは違うところだろう。住民の生活を考慮し止めるべきだろう。現在の住民は、祖父祖母の代の中止運動時代に生まれ、さらに親の代を経て移転と言う事が事実として育ってきているから、改めて中止運動より移転先の生活の充実を考えているんではないでしょうか。
・住民が裁判してまで「まずい水」を飲みたくないと言う声は、今回の騒動であまりマスコミで報道されていません。多くの税金を使い石灰を大量に入れ中和した水より、地元のおいしい地下水を飲みたいのは普通の事だと思います。
・今回の中止でいくらかかっても、今後の出費を考えたら仕方が無いでしょう。ダム本体はまだ工事に着手していないんですから、着手したら後10年位いくらかかるか分かりません。



国土交通省 八ッ場ダム工事事務所
http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/index_nn4.htm
八ッ場あしたの会・八ッ場ダムを考える会
http://www.yamba-net.org/index.php